【第1部】認知症のとき相続手続きはどうなる?家族を支える法定後見制度
本記事は、成年後見制度について全5回で解説するシリーズの第1回目です。
もし自分が認知症になったら、財産の管理は誰がしてくれるのだろう?
そんな不安を感じたことはありませんか。
判断能力が低下した場合に備える制度として、
「法定後見」と「任意後見」という2つの仕組みがあります。
似ているようで、この2つには決定的な違いがあります。
法定後見制度とは
法定後見制度は、すでに判断能力が低下してしまった方を守るための制度です。
家庭裁判所に申立てを行い、裁判所が本人の状況を確認したうえで後見人を選任します。
本人の判断能力に応じて
- 後見
- 保佐
- 補助
の3つの類型に分かれています。
一見すると安心できる制度に見えますが、ここには意外な現実があります。
家族が後見人になれるのは2割未満
最高裁判所の統計によると、法定後見で親族が後見人に選ばれる割合は2割未満です。
つまり、8割以上のケースで弁護士などの専門職が後見人になっているというのが現状です。
「家族のことは家族で支えたい」と思っていても、裁判所が「専門家の方が適切」と判断すれば、
見ず知らずの第三者が後見人となり、その報酬を継続的に支払う必要が出てきます。
任意後見制度との決定的な違い

一方、任意後見制度は、元気なうちに、自分で後見人を選んで契約しておく制度です。
最大の違いはここです。
- 法定後見:後見人は裁判所が選ぶ
-
任意後見:後見人を本人が選べる
任意後見契約は公正証書で作成します。
将来、判断能力が低下したときに、あらかじめ選んでおいた家族や専門家に、財産管理や生活のサポートを任せることができます。
「元気なうち」が何より重要
任意後見制度には、重要な前提条件があります。
それは、契約時に本人に十分な判断能力があることです。
認知症が進行してからでは、任意後見契約は結ぶことができません。
その場合、法定後見しか選択肢がなくなり、後見人を自分で選ぶ権利は失われてしまいます。
つまり、任意後見は「転ばぬ先の杖」として、元気なうちに備えておく制度なのです。
専門家としての意見

人生の後半において、「誰に自分の財産や生活を託すか」は非常に重要な問題です。
- 法定後見では、親族が後見人になれるのは2割未満
- 任意後見なら、信頼できる人を自分で選べる
- ただし、契約できるのは判断能力があるうちだけ
「まだ大丈夫」ではなく、「今だからこそできる準備」があることを知っていただきたいと思います。
次回予告(第2部)
次回は、任意後見契約もなく、法定後見も使っていない場合に、家族がどのような困難に直面するのかについて、具体例を交えて解説します。
認知症と後見制度シリーズ(全5回)
認知症・財産管理・相続への備えについて、順番に読むことで理解が深まります。



