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【第4部】認知症のとき相続手続きはどうなる?家族を支える法定後見制度

本記事は、成年後見制度について全5回で解説するシリーズの第4回目です。
第1部〜第3部では、後見制度の違いや、任意後見契約のメリットについて解説してきました。

今回は、任意後見契約だけではカバーできない部分と、本当に安心できる備えにするために一緒に準備しておきたい契約について解説します。

任意後見契約にも「カバーできない期間」がある



任意後見契約はとても有効な制度ですが、万能ではありません。
効力が発生するのは、「判断能力が低下してから」です。

つまり、次のような場面はカバーできません。

  • 判断能力があるうちの財産管理や手続き
  • 亡くなった後の各種手続き

そのため、「生涯を通じて安心できる仕組み」をつくるには、任意後見契約に加えて、以下の契約を組み合わせて準備しておくことが重要になります。

 

① 見守り契約|変化のタイミングを見逃さないために



見守り契約とは、定期的な訪問や電話連絡などを通じて、本人の心身の状態を確認する契約です。

なぜ必要なのか

任意後見契約は「判断能力が低下したとき」に発効しますが、そのタイミングを正確に判断するのは意外と難しいものです。

特に一人暮らしの場合、認知症の初期症状に周囲が気づかず、気づいたときには財産管理に支障が出ていた、というケースも少なくありません。

見守り契約があれば、

  • 定期的に状況を確認できる
  • 認知機能の低下を早期に察知できる
  • 適切なタイミングで任意後見へ移行できる

という流れをつくることができます。

② 生前事務委任契約|元気なうちの手続きもカバー

生前事務委任契約は、判断能力があるうちから、財産管理や手続きを任せておく契約です。

どんな場面で役立つか

たとえば、

  • 足腰が弱って銀行に行けない
  • 入院中で各種手続きが難しい
  • 遠方に住んでいて不動産管理ができない

このように、判断能力はあっても、実務が難しい場面は少なくありません。
生前事務委任契約があれば、本人に代わって受任者が手続きを行えます。

公正証書で作成することが重要

生前事務委任契約は、できるだけ公正証書で作成することをおすすめします。

私文書の場合、金融機関によっては「この契約書では対応できません」と言われ、結局あらためて委任状の提出を求められるケースもあります。

公正証書にしておくことで、銀行などの窓口でも手続きがスムーズに進みやすくなります。
(※すべての金融機関が必ず対応するわけではありません)

遺言も公正証書で準備しておく

 

公正証書を作成する機会があるなら、遺言もあわせて公正証書で作成しておくことをおすすめします。

公正証書遺言には、次のようなメリットがあります。

  • 公証人が内容を確認するため、無効になりにくい
  • 原本が公証役場に保管され、紛失の心配がない
  • 家庭裁判所の検認手続きが不要

生前事務委任契約と遺言をあわせて公正証書で作成しておくことで、生前から死後まで一貫した備えが可能になります。

 

③ 死後事務委任契約|亡くなった後の手続きを任せる

人が亡くなると、想像以上に多くの手続きが発生します。

  • 葬儀や火葬の手配
  • 納骨
  • 病院・施設費用の精算
  • 公共料金や各種サービスの解約
  • 賃貸住宅の明け渡し
  • SNSアカウントの削除 など

これらは「相続財産の処分」ではないため、遺言執行者の権限外となるケースもあります。

死後事務委任契約を結んでおけば、信頼できる人に、これらの手続きをまとめて任せることができます。


④ 遺言執行|遺言を「確実に実行」してもらうために

遺言を書いただけでは、それが確実に実行されるとは限りません。

遺言執行者を指定しておけば、

  • 預金の解約・払い戻し
  • 不動産の名義変更
  • 株式の名義書換

など、遺言の内容を実務としてきちんと実行してもらえます。

特に、相続人間に利害対立がある場合や、相続人以外への遺贈がある場合には、専門家を遺言執行者に指定しておくことで、トラブルを防ぎやすくなります。

セットで準備することが「本当の安心」につながる

これらの契約を任意後見契約と組み合わせると、次のように人生全体をカバーできます。

  • 元気なうち:生前事務委任契約
  • 判断能力が低下したとき:任意後見契約(見守り契約でタイミング把握)
  • 亡くなった後:死後事務委任契約+遺言執行

バラバラに考えるのではなく、人生全体を見据えて仕組みを設計することが、本人にとっても、ご家族にとっても、本当の安心につながります。

 



専門家としての意見

現場では、「任意後見契約だけ結んで安心していた」という方も少なくありません。
しかし実際には、元気なうち・亡くなった後の部分に空白が生まれ、結局ご家族が困ってしまうケースを多く見てきました。

  • 判断能力があるうちの手続きに対応できない
  • 亡くなった後の実務を誰が担うのか決まっていない
  • 家族が「どこまでやってよいのか分からない」と不安を抱える

こうした事態を防ぐためには、任意後見を「単体」で考えるのではなく、複数の契約を組み合わせて設計することが非常に重要だと感じています。



次回予告(第5部・最終回)

次回はいよいよ最終回です。
第5部では、近年注目されている家族信託と任意後見契約の関係、
そして両者をどのように組み合わせるとより実践的な備えになるのかを解説します。



認知症と後見制度シリーズ(全5回)

認知症・財産管理・相続への備えについて、順番に読むことで理解が深まります。

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