人が集まる市役所のつくり方・日向市役所
市民の日常に溶け込む公共建築
宮崎県日向市にある「日向市役所」を訪れました。
所在地 宮崎県日向市本町10番5号
名称 日向市役所
構造 鉄筋コンクリート造(RC造)、一部鉄骨造(S造)
建築家 内藤 廣 さん
市役所というと、
- 手続きのために行く場所
- 用事が終われば帰る場所
そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし日向市役所は少し違います。
ここには、市民が自然と集まり、思い思いの時間を過ごせる空間が広がっていました。

日向市駅から続く、まちづくりの物語

日向市役所を設計したのは、建築家の内藤廣さんです。
内藤さんについては、前回ご紹介した「日向市駅」の記事でも触れました。
実は日向市でのプロジェクトは、駅単体の話ではありません。
2002年に始まった駅周辺のまちづくりから続く、大きな構想の一部なのです。
内藤さんは著書の中で、
建築はそのエネルギーを受け止め、未来に受け渡す装置
と語っています。
日向市役所もまた、その考え方を感じられる建築でした。

「5つのたまり」がつくる居場所
日向市役所には、
- 陽だまり
- 風たまり
- 緑たまり
- 水たまり
- 人だまり
という「5つのたまり」という考え方があります。
これは市民参加のワークショップから生まれたコンセプトです。
館内を歩くと、ロビーやテラスなど様々な場所に、人が自然と立ち止まれる居場所が用意されていました。
行政手続きを行う場所でありながら、どこか公園のような心地よさを感じます。

木のぬくもりに包まれる空間

館内には、日向市駅と同じく耳川流域の杉材がふんだんに使われています。
木の香りや質感が感じられ、初めて訪れてもどこか懐かしさを覚える空間です。

公共施設というと無機質な印象を持つことがありますが、日向市役所にはそれがありません。
木材の持つ温かさが、市民の居場所としての空間を支えています。
美しさだけではない、防災拠点としての役割
もちろん日向市役所は、見た目だけを追求した建築ではありません。
市政の中心であり、災害時には地域を支える防災拠点でもあります。
建物には免震装置が備えられ、
- 非常用発電
- 非常用水
など、災害時にも機能を維持できる仕組みが整えられています。
人が集う場所であると同時に、人を守る場所でもあるのです。
市役所が街の居場所になる
訪れたのは土曜日でした。
館内では勉強をする学生。
休憩をする人。
会話を楽しむ人。
それぞれが思い思いの時間を過ごしていました。
用事がなくても立ち寄りたくなる。
そんな市役所は決して多くありません。
日向市駅から始まったまちづくりの考え方が、市役所へとつながり、街全体に広がっているように感じました。
まとめ
公共施設は、ただ機能を満たすだけの「箱」ではありません。
そこに人が集まり、過ごし、街とのつながりを感じられる場所にもなります。
日向市役所は、そんな可能性を形にした建築でした。
行政施設でありながら、市民の居場所でもある。
その心地よさを、ぜひ現地で体感してみてください。
