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【第5部・最終回】認知症のとき相続手続きはどうなる?家族を支える法定後見制度

本記事は、成年後見制度について全5回で解説するシリーズの最終回です。
第1部〜第4部では、後見制度の違い、任意後見契約のメリット、そして任意後見とあわせて準備しておきたい各種契約について解説してきました。

最後に、近年注目されている「家族信託」の仕組みと注意点、そして、任意後見契約などと組み合わせることで実現できる“本当に安心できる備え”について解説します。

 

家族信託とは何か



近年、相続対策や認知症対策として「家族信託」が注目されています。

家族信託とは、財産を持つ方(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理や処分を任せる仕組みです。
うまく活用すれば、認知症になった後でも財産管理を継続できるなど、大きなメリットがあります。

 

家族信託の主なメリット



家族信託には、次のような強みがあります。

  • 契約内容を柔軟に設計できる
  • 認知症になっても財産管理が止まらない
  • 「配偶者 → 長男 → 孫」など、複数世代にわたる承継先を指定できる
  • 信託財産は遺産分割協議の対象外になる

非常に優れた制度であることは間違いありません。
しかし、家族信託だけですべてが解決するわけではないという点も知っておく必要があります。

 

家族信託の3つの限界

 

① 身上監護はできない

家族信託で扱えるのは「財産の管理・処分」のみです。
次のような行為は、信託契約ではカバーできません。

  • 介護施設との入所契
  • 医療機関での治療方針の決定
  • 介護サービスの利用契約

たとえば、親が認知症になり施設入所が必要になった場合、費用の支払いはできても、「入所契約を結ぶこと」はできないのです。この部分を補うのが任意後見契約です。

② 信託していない財産は管理できない

家族信託で管理できるのは、「信託した財産だけ」です。

  • 信託していない預金口座
  • 信託していない不動産
  • 新たに相続した財産
  • 年金収入

これらは信託の対象外です。
年金や生活費用の口座が凍結すれば、日常生活そのものが立ち行かなくなる可能性もあります。

③ 死後の手続きには対応できない

家族信託は、本人が亡くなった時点で終了します。

  • 葬儀・火葬の手配
  • 納骨
  • 各種契約の解約
  • 遺品整理
  • 賃貸住宅の明け渡し

こうした「死後の実務」は、信託では対応できません。
ここを補うのが死後事務委任契約です。

 

本当に安心な備えとは

 

結論として、最も安心なのは「制度を組み合わせて設計すること」です。

理想的な組み合わせ

  • 家族信託
     → 不動産や金融資産など主要財産の管理と承継

  • 任意後見契約
     → 施設契約・医療判断など身上監護
     → 信託していない財産の管理

  • 生前事務委任契約
     → 元気なうちの各種手続きの代行

  • 死後事務委任契約
     → 葬儀・納骨・解約・整理など死後の事務

  • 遺言(公正証書)
     → 信託財産以外の財産の承継設計

これらをトータルで設計することで、初めて「元気なときから、亡くなった後まで」一貫した安心が実現します。

 

具体例:Aさん(75歳)のケース

 

Aさんは次のような準備を行いました。

  • 家族信託:自宅・賃貸アパート・主要預金を長男に信託
  • 任意後見契約:長男を任意後見人に指定
  • 生前事務委任契約:日常の支払いや年金管理を委任
  • 死後事務委任契約:葬儀や納骨の希望を明確化
  • 公正証書遺言:信託外財産の承継方法を指定

その結果、

  • 元気なうちは → 生前事務委任でサポート
  • 認知症になっても → 信託と後見で継続管理
  • 亡くなった後も → 死後事務と遺言で円滑に手続き

人生のすべての局面に対応できる体制を整えることができました。

 

「完全な備え」が家族を守る

認知症対策や相続対策は、
どれか一つの制度だけで完結するものではありません。

家族信託
任意後見
生前事務委任
死後事務委任
遺言

これらを総合的に設計してこそ、本当の意味での安心が得られます。



専門家としての意見

成年後見、家族信託、各種契約、遺言――
制度を「単体」で見るのではなく、「全体設計」で考えることが重要です。

現実には、「家族信託だけやって安心していた」「遺言だけ書いてあとは未整備」というケースも少なくありません。しかし、その状態では将来どこかで必ず“抜け”が生じます。

本当にご本人とご家族を守るためには、ライフステージ全体を見据えた設計が不可欠だと実感しています。



最後に:今こそ、行動を

この全5回のシリーズでは、

・法定後見と任意後見の違い
・備えがない家族の現実
・任意後見の具体的メリット
・付随契約の重要性
・家族信託との正しい組み合わせ

をお伝えしてきました。

「まだ元気だから」ではなく、「元気な今だからこそ、できる準備がある」ということを、ぜひ覚えておいてください。

当事務所では、任意後見契約・家族信託・遺言作成・相続手続きまで、トータルでのご相談を承っています。

一人ひとりの状況に合わせて、無理のない形で最適な設計をご提案いたします。
出張相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。



認知症と後見制度シリーズ(全5回)

認知症・財産管理・相続への備えについて、順番に読むことで理解が深まります。

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